2011年に福島第一原子力発電所による事故が起きた時、2000年に書かれたこの本のことを思い出しました。
海に面して建てられた原子力発電所の、原子炉が爆発した。当然、周囲は放射能で汚染され、あたりは立入禁止区域になった。それが、半径30キロ圏内と決められた。(中略)そして、その境界線で区切られた地域は、一方が海に面しているため、ちょうど半月の形になったのだ。──それが、由来なのだろう。「ハーフムーン」という、醜い部分を覆い隠すかのような、美しい名前の。
実際には、県の指示の半径2キロから徐々に拡大していき、3月12日には半径20キロ以内には国からの避難指示が出されているようです。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/cat01-more.html
そして、現在では風向きや地形を示すような形で、帰宅困難区域が指定されています。もちろん作中のように鉄条網は張られていませんし、「ハーフムーン」とも呼ばれてはいません。ゲートはあるようです。
本書は、原発事故によって立入禁止区域に指定された「ハーフムーン」内で暮らす少年少女の話です。原発事故によって立入禁止区域が生まれることにはとてもリアリティがあります。立入禁止区域内に少年少女のみで暮らす、というところはファンタジーがあります。外部からの乱入や、新しい仲間によって、元々いた仲間との考えの違いが生まれたり、暴力の渦に飲み込まれていく心理にはリアリティがあります。リアルの中にファンタジーがありそれによって新たなリアルが立ち上がってくる感じがします。
暴力描写は苛烈ですが、不思議と透明感を覚える作品です。暴力が大丈夫な方は試しに。

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