沙藤 一樹「D-ブリッジ・テープ」:夢の橋の上で

「D-ブリッジ」の「D」はDUMPのDでもなくDUSTのDでもなくDREAMのDです。

おそらくは不法投棄によって、横浜ベイブリッジ(作中の通称D-ブリッジ)は、かつての夢の島ゴミ処理場のようにゴミだらけになっています。

作品は、大人たちの会議の場で、少年の独白が録音されたカセットテープを再生する、という体裁をとります。少年は、D-ブリッジでどんなふうに生活したのか、何が起きたのかを語ることで、自らの生きた証をテープの形でのこしました。反面、会議室の大人たちはどこか他人事のような冷淡な態度です。テープを再生している相原も、何かしらの思惑があってテープをかけているようで…?

現実にある建築物(橋は正確いうと土木構造物とのことですが)が、作中でゴミだらけになっていたり、壊れていたりすることに結構そそられます。アニメの「リコリス・リコイル」も、旧電波塔(スカイツリーっぽい)が傾いて支えられているような絵一つで全部見られてしまいました。本作もそのような、アイディア一つの力強さを感じます。

本作は、全体として詩のような作品です。そんな怪我して大丈夫なの?とか、食べ物それだけで生きられるの?突然焚き火?とか、現実との整合性のみたいなものが気になる人もいるのではないかなと思います。ただ、本書にとって大事なのはそこではなく、文章から立ち上がってくる力のようなものに感応することなのではないでしょうか。一連の体験として一気に読むと、より味わえる作品だと思いました。

第4回日本ホラー小説大賞・短編賞受賞作品です。私は再読だったためか、40分程で読めました。ぜひ、一気読みを。

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