楽しいエッセイ「どくとるマンボウ航海記」や、純文学作品「楡家の人々」の作家の北杜夫による初期の短編やエッセイを収めた本です。「あくびノオト」という題だったものが後に改題されたものであるとのこと。私が持っているのは中公文庫版で現在絶版のようですが、新潮文庫版はkindleで売っているようです。
なんとなく生産性や効率性を求められている(少なくとも私にはそのように感じられる)世の中にあって、本書に収められている「なまけもの論」や「なまけもの再論」は、笑って読みながらもどこか心を打つところがあります。
立派な、とか、褒めたたうべき、とかいう形容詞がつく仕事になればなるほど、単純に衣食住をまかなう生物的条件からイツダツしている。
「なまけもの論」
なんか呪術廻戦の七海も似たようなことを言っていたような気がします・・・。
言い古されたことであるが自分をバカと認識しているバカと、そう思っていないバカとでは雲泥の差がある。むろん泥のほうが上等なので、雲というものはいい加減なものだ。
「なまけもの再論」
一連の流れの中で読まないと笑えないかもしれませんが、北杜夫の文章はやっぱり面白くて好き。
「彼は新しい日記帳を抱いて泣くー1960年六月十日ごろー」というエッセイでは、精神科医としての北杜夫と、病院にいる知的障害者との交流が描かれています。北杜夫と、北杜夫から新しい日記帳をもらった「彼」はお互いに友達だと思っていて、「彼」は日記帳に書くために字の練習をしたり、内容を北杜夫に相談したりします。私は障害者施設で働いていたこともあるのですが、このエッセイに漂っている心の交流みたいなものに深く共感しました。またそっちで働こうかな・・・。
生産性や効率性やスピードを求められすぎて辟易している方に、ぜひ読んでいただきたいです。

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